U18世代のサッカーについて考える(育成年代は高体連かJクラブユースか)

さて息子が高学年になる頃から、サッカー関連本を読み漁るようになった。育成関連、海外選手・監督の自伝やドキュメンタリー系などを中心に興味のある分野の本を見つけるとポチっとしている。

今年(2020年)の年明けに本屋さんでたまたま見かけたこの本、『高体連 VS Jクラブユース 育成年代 日本サッカーの将来を担うのはどちらか』という少し煽ったような題名を見て購入した。そもそもJユースに入る事の難易度を考えると、高体連とJユースの比較をしてどちらを選ぶべきか的な思考は極めて難しいのだが、現在のU16-U18の育成事情がどうなっているのかはとても気になるところではあった。

 

本に関する情報

高体連vsJクラブユース 育成年代 日本サッカーの将来を担うのはどっちだ!?

筆者:原田大輔
発行:東京ニュース通信社
価格:1,650円(税込)
発行日:2019年12月16日

目次

  • 第1章 日本サッカー協会が目指す育成の姿とは?
  • 第2章 高体連サッカー部 強豪校の監督に聞く①
  • 第3章 高体連サッカー部 強豪校の監督に聞く②
  • 第4章 Jクラブユース 指導者に聞く①
  • 第5章 Jクラブユース 指導者に聞く②
  • 第6章 日本サッカーの育成に異議あり
  • 第7章 育成年代・世界と戦うために必要なものとは

本書の内容

概要

この本はU18育成年代に関わる方々のそれぞれの立場から語ったものがまとめられている。

  • 日本サッカー協会 (池内ユース育成ダイレクター)・・・現状のU18育成世代(高体連・Jユース)の現状と取り組み
  • 高体連(流通経済大柏本田監督・前橋育英山田監督)・・・高校サッカーの取り組み・強み
  • Jユース(FC東京中村監督・柏レイソル渡辺ダイレクター)・・・Jユースとしての育成・指導方針・教育
  • ACミラン千葉アカデミー(ルカ・モネーゼダイレクター)・・・日本の育成年代の3年間という枠組の課題
  • 日本サッカー協会(影山監督)・・・世界と戦うために

ざっとこんな感じだ。高体連とクラブユースという世界的にも特殊なふたつの選択肢があるこの仕組みを強みとしたいと日本サッカー協会池内氏は語っているが、ACミラン千葉のダイレクターは3年間という枠組みが選手たちの可能性を奪っていると語っているのが現在のこの育成年代の課題だと私は感じた。

現在のU18世代のカテゴリー

2019年段階で、

高体連は162,397人(高校は4,038校)

クラブユースは3,384人(124チーム)

→クラブユースのうち55チームはいわゆるJクラブユースチーム(J1〜J3)

U18世代でサッカーをしている中でJクラブユースに所属しているのは1%弱のエリートだ。昔と比べてU15世代はジュニアユースという選択肢が大幅に増えたが、ユースチームはまだまだ少なく、ここが増えていく事が今後の課題のように思う。

書評

この本はU18の育成年代におけるそれぞれの立場、高体連からは強豪の流通経済大学柏、前橋育英の監督JユースはFC東京・柏レイソルの監督・ダイレクターが語っているのが一つにまとまっているという部分でとても面白い。

ただしそれぞれ高体連・Jユースの立場での強みがクローズアップされよくわかるのだが、実際にどっちが良いの?という観点でみた場合、それぞれの弱みは見えてこない。Jユースや高体連におけるそれぞれの現状置かれている仕組み上の課題は見えてくるが、実際は私たち側から知りたい部分というのはこの本で理解するのは難しいだろう。

昨今は東西のプレミアリーグ、地域別のプリンスリーグ、県リーグにおいてそれぞれJユース・クラブユース・高体連のチームがリーグ戦で戦うなど、切磋琢磨する場が増えているのは良いことだ。一方で、部員の多い高体連の選手たちの出番は?またJユースは高校サッカー選手権のような規模の大きな大会がないなど、サッカーとしてはまだ分断されているように思う。

こういったU18の育成年代サッカーに関する現状・課題・取り組みなどがまとめられている書籍というのは他にないので、子供がサッカーをやっているならば読んでおくと良いだろう。

サッカーというスポーツ(サッカーに限らずだが)がそれぞれ中学・高校と3年間で区切られており、JユースやJジュニアユースもそれに準じた活動になっており、例えばJユースに入ったら3年間はその立場が保証されている部分は、良い面もあるが、競争力を削いでいる部分も多いように思う。そう言った面では、高体連でもなくJユースでもないACミラン千葉のダイレクターの語りがあり、その問題点を大きくクローズアップしている部分があるのは、この本のとても良い価値だと言える。

だから、Jユースか高体連か?と考えるよりも、日本のサッカー界はこのままで良いのか?もっと抜本的に変わる必要があるのでは、というのがこの本を読んだ感想だ。

部活の課題とその流動性の悪さ

最初にある通り、U18育成年代におけるサッカーをほぼ賄っているのが高校サッカーだ。(98%)ここから極めて個人的な考えを書いておきたい。

親として子供のサッカーを見る時、高体連は高校サッカー選手権やインターハイなどスポーツとして魅力的な部分も多い。しかし私も何度か高校サッカー選手権の大会を見に行ったが、ベンチに入る選手たちの何倍ものユニフォームを着た選手たちが観客席で応援しているのを見かける。

例えば國學院久我山のサッカー部員は184名、青森山田も183名だ(それぞれHPより確認)当然部員数も多いのでリーグ戦などはAチーム〜Dチームなど別れて戦っているのも認識しているが、それでもどこまで十分に活動出来ているのだろうか。

ACミラン千葉アカデミーのルカ・モネーゼダイレクターは言う。

サッカーの強豪校といわれる高体連のチームの中には、100人以上の選手を抱えている高校がざらにあります。こういった高校ではビジネス色が強くなっているように感じています。サッカー部が強くなればなるほどたくさんの生徒が集まるようになり、それだけで学校はお金を稼ぐことができる。(以下略)

高校によっては部員数を絞っている学校もあるが、多くはこの部員を集めることによりチームを強化し、結果その高校のブランド化につなげている側面もあるだろう。

部員が100名以上いる強豪サッカー部の監督は、言ってみれば中企業の社長みたいなもので、結果強い権限を持つ。選手を生かすも殺すも監督次第で、中には力があったとしても監督と合わない選手も出てくるだろう。そして日本の部活自体、昔ほどではないがまだまだパワハラ的な事件がマスコミを稀に賑わしてくる。

戸田和幸オフィシャルブログ「KAZUYUKI TODA」Powered by Ameba

https://www.jleague.jp/release/wp-content/uploads/2019/10/92…

サッカー解説でおなじみ戸田和幸さんのこのブログはとても泣ける。こんな事は今の時代で絶対に起こしてはいけない。

親として懸念するのは、

頑張って名門強豪高校のサッカー部に入る。→ チームに合わない(監督など)や試合の出番が少ない。 →辞めたい

と言ったスパイラルに陥った際、他の高校のサッカー部に移るというのは物理的(転校)に難しいし、現状クラブユースチームも少ないので、サッカーを辞めざるを得ないリスクもある。まあJユースでも合わなくて辞めたくなってしまったら同じなんだけどね。

U15にせよ、U18にせよ一旦そのチームに入ると基本は3年間だ。この教育をベースにしたスポーツ活動が同時に流動性や選択制を狭くしている部分もある。こういった部分でのスポーツの改革があれば、日本のスポーツが良くなると思うのだが、かなりの時間を要するだろう。少なくとも今後、もっと多くのユースチームが誕生し、少しずつでも変わっていく事を望みたい。